読了:高橋 寿一「知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト」

高橋 寿一さんの著書
知識ゼロから学ぶ ソフトウェアテスト
を読みました。

業務でソフトウェア評価を行っていたため、良いチャンスだと思い、ソフトウェアテストについて体系的に書かれている本書を読んでみました。

ソフトウェアテストの研究で博士号をとり、米国マイクロソフトでパッケージソフトウェアのテスト、SAP社でシステムソフトウェアのテスト、ソニーで組み込みソフトウェアのテストに従事してきたという、まさにソフトウェアテストのプロフェッショナル、というような高橋さんが書かれた本。

非常に読みやすく、かつ体系にまとまっているのでソフトウェアテストの概要を広く知ることができるように思います。
特に、筆者の研究とテスト実施の経験に裏づけされているためか、一つ一つの説明に納得できます。
色々な会社でテストをしてきた経験からの具体例の記載もとてもありがたいです。

また、単に手法の説明があるだけではなく、「どのテスト手法を適用すべきかを良く考えること」、「要求定義どおりではなく、要求定義どおりに動かないようなテストケースを書くべし」といったようなテストケース作成・テスト実施のための心構えも記載されています。

パフォーマンステストを後回しにしない、という記載はなるほど、と思いました。
確かにパフォーマンスを求めるより、要求された機能が実現できるかどうかのテストを優先しがちかと思うのですが、いざ全ての機能が完成してパフォーマンスを測定したら要求に遠く及ばず、設計が根底から覆る、ということもあるかも知れません。

当たり前のことかもしれませんが、設計・実装段階では時間がないために機能を削ることも可能だが、テストの場合は時間がないからといって機能を削るという選択肢はない、という記載も、読んでみてハッとしました。
これに関係して、7章 ソフトウェアテスト運用の基本(テスト成功の方程式)では、テストのスケジューリングやテストケースの作成・実施やそのタイミングについての記載があります。

「最後に」の部分では、本書では基本的なことを書いており、「オブジェクト指向テスト」と「テストマネージメント」については書けなかった、と記されています。
本書でも書かれていますが、テストのスケジュールは開発のスケジュールやソフトウェアの品質に大きく左右されるため、見積もりは非常に難しいです。本書ではスケジュールを正確に見積もることが最重要課題なのではなく、コントロールできるスケジュールが必要、と記載されていますが、このあたりに関連して、テストマネージメントについて詳しく書かれた本をいずれ読んでみたいと思いました。

最後に目次の章だけ掲載しておきます。
1 テストを始める前に(「バグ」とは何かを考える)
2 ソフトウェアテストの基本(ホワイトボックステスト)
3 エンジニアが最もよく使う手法(ブラックボックステスト)
4 ソフトウェアの性能をチェックする(システムテスト)
5 攻撃に耐えうるソフトウェアの構築(セキュリティテスト)
6 その他のテスト手法(スモークテストと回帰テスト)
7 ソフトウェアテスト運用の基本(テスト成功の方程式)
8 ソフトウェア品質管理の基本(ソフトウェア品質のメトリックス)
9 テストの自動化という悪魔(なぜ自動化は失敗するのか)


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